東京の春、着物柄が語るもの ― TOKYO KIMONO SHOW 2026レポート
こんにちは。HeWhoMe.Tokyo代表小野崎記子です。
桜が散り、菖蒲が咲きはじめると、東京は静かに次の季節へと動きます。
2026年4月 | HeWhoMe.Tokyo Letter
今週、当社のサロンがある人形町の街を舞台に開催された「TOKYO KIMONO SHOW 2026」を訪れました。江戸情緒の残る商店街に、着物姿の方々が集い、染めの技と着物の柄の意味を語り合う——そんな光景が、日常の延長として繰り広げられていました。

アートになった手ぬぐい
会場の1つ、老舗・戸田屋商店で目を引いたのが、額装された手ぬぐいの数々です。注染(ちゅうせん)という伝統技法で染められた手ぬぐいは、インクがわずかに滲む独特の柔らかさを持ち、壁にかけると一枚の絵画のように映えます。鯉、菖蒲、猫、桜——柄は季節を映す鏡です。
今の季節の柄:菖蒲と鯉
4月末から5月にかけて、日本の染め物に頻繁に登場する二つの柄があります。
菖蒲(しょうぶ)は、5月5日の端午の節句を象徴する花。剣のように真っすぐ伸びる葉は、強さと勇気を表します。
鯉(こい)は、激流を遡る姿が「逆境に負けない力」の象徴とされ、こいのぼりとして空を泳ぐのもこの時季です。新人がチャレンジをする場面では登竜門という表現があります。登り切ったら、龍になるという中国の故事から来ています。
会場の外では、亀甲(きっこう)柄の着物をまとった方の姿も。亀の甲羅をかたどった六角形の連続模様は、奈良時代の正倉院宝物にも見られる古典中の古典であり、現代のデザインにも自然に溶け込んでいます。



「今の柄」が持つ意味
日本の美意識には「ものの哀れ」という感覚があります。過ぎ去るからこそ美しい、という感性です。菖蒲は5月だけに許された柄だからこそ、その季節に身につける意味が生まれます。
海外の方々に日本のテキスタイルをご紹介するとき、私がもっとも大切にしたいのはこの点です。柄には「いつの柄か」という時間の物語が宿っています。季節を着るものに反映させる、自然と共に生きる日本人のとても繊細な美意識が表現されているのが、着物なのです。
着物の柄のこと、季節のこと、日本文化のこと、何かご質問があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。
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